「ご冗談でしょう、ファインマンさん」という本を読みました。ファインマンという物理学者のユーモアなエピソード集ですが、その中に夢と幻覚についてのエピソードがあり、自分の体験と重ねながら読んでいました。

該当のエピソード
上巻 逃げの名人
下巻 変えられた精神状態

昔、私が20代のころ、いわゆるデスマーチプロジェクトで働いていた時期がありました。過労で同僚が次々に倒れていくなか、私は「生き残らねば」と考え、どういうわけか、少ない睡眠時間でいかに効率よく体力を回復するか、ということを実験していました。本やブログを読み、紹介されていた手法を片っ端から試し、起床時間を固定する、睡眠時間は1.5時間の倍数で最低でも4時間半は寝る、コーヒーを飲んでから15分後に15分昼寝をする、という自分なりのベストプラクティスを編み出していました。

デスマーチも厳しさを増し、週に三日は徹夜、休日もすべて出勤、家に帰れる時も終電、という睡眠不足な状態が続いたある日、いつものように15分の昼寝で今までに無いくらいハッキリとした夢を見ました。ファインマンさんのエピソードでも夢の色についての話がありましたが、私がその時に見た夢にははっきりと鮮やかな色がついていました。明るくて輝度が高めな夢でした。
当時の職場は昼休み中は照明が消え、昼休みが終わるとチャイムとともに照明が点くようになっていて、チャイムの時間が起床時間になるように寝ていました。夢の中でチャイムの音を聞き、ハッと我に返り、バッと起き上がったのですが、起きたはずなのに夢が終わらない、夢と現実が重なってぐわんぐわんした状態になったのです。
体は起きたのに夢が終わってない、えっ、ナニコレ?!と思った数秒くらいでうわーーーっと現実が戻って夢は去っていきました。hideのPsychommunityの冒頭部でノイズがうわーーーっときてメロディーが始まるような感じです(分かりにくいたとえ)

夢が去っていくとき、脳内のCPUクロックがバーストしたよような感じで、ものすごい早回しで夢が通り過ぎていき、何かが脳内で分泌されるのか、頭がすっきりと冴えて、周囲がよく見えるようになり、気持ちがいいのでした。

この現象は睡眠不足が重なったときによく現れ、私はこの現象をもっと体験したいがために毎日会社に通い、デスマーチを乗り越えたのでした(あぶない)

そんな体験をしたことでスピリチュアルなことにも少し興味が沸き、あるとき、「幽体離脱ができたら、体は寝ている最中に外にでかけたりして睡眠時間を有効活用できるんじゃないか?」というひらめきがあり、幽体離脱の練習を始めたりしました。長期のデスマーチでいよいよ頭がおかしくなっていたと思います。

結局、幽体離脱ができるようになる前に転職し、時間にも余裕ができて、幽体離脱の練習はすっかり止めてしまいました。

年月が経ち、娘も生まれました。まだ一人で寝られない娘の寝かしつけで添い寝をするのですが、よく一緒に寝落ちして朝まで寝てしまいます。
「今日は寝落ちしないで起きて、XXしなきゃー」と思いながら、娘が熟睡するのを待ちながら、ぼーっとしていると、気が付くと頭の中に雑念が溢れてきます。これは瞑想していると出てくる雑念と同じやつだなーと思いながら、今は瞑想しているわけじゃないし、ほっとこう、と思いながらぼーっとを続けていると、その雑念は最初は言葉というか心の声のようなものなのだけど、ふと、気が付くとそれが視覚に広がっていて、目の前に情景が広がっているのです。その時、添い寝している娘の体温はずっと感じていて、あれ、起きているのに夢をみている!でも今度は起きているところに夢が入りこんできた!以前の逆だ!ということが何度かあったりしました。

たいてい、そのまま寝てしまい、ハッと気が付くと朝で、たまに普段の瞑想のクセなのか、あ、雑念止めなきゃ!と思って止めると夢が消えたりします。雑念止めなきゃ!が、起きていた自分が意識して取った行動なのか、夢から覚めるエピソードとしてよくある崖から落ちるやつみたいな感じのたぐいなのかは、よくわかりません。

そんなことから、起きているときに湧いてくる雑念と寝ているときの夢が現象として繋がっているような気がしています。

ある時、いつものように添い寝をしているときに見た夢の中に名簿が出てきて、その中に書かれている名前の漢字が珍しくて読めなかったのだけど、よく見るとルビがふってあって読むことができたのです。夢を見ながら、あれ、この漢字、今まで見たことも無い名前だけど、自分の脳みそのどこからこの漢字と読み方が創造されたんだ?と考えていました。(漢字の画数は多くないところまでは覚えているのだけど、どんな字だったかは起きてしばらくすると忘れてしまった・・)

夢は記憶の整理をしているという話を聞いたことがありますが、夢の中で、起きているときに経験していないことも創造されていて、そこでファインマンさんのように夢の中で観察ができるようになってくると、これは幽体離脱して外を歩いているのと見分けがつかない夢を見ることができるかもしれないな、などと思ったりしたわけで、夢の観察スキルについては自分も良いところまで来ている気がしているのでもうそろそろ幽体離脱できるんじゃないかと思ったりしているわけです。